東京地方裁判所 昭和42年(ワ)11954号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕右鑑定の結果は昭和四二年九月一日現在における賃料の月額は3.3平方米当り金九二円とするのであるが、右の如く決定した理由の要旨は次のとおりである。即ち、本件土地は不整形平坦な土地で近隣は概ね商店住宅工場等の敷地として利用され、中高層建物の建築が促進されるものと予想されるところが、今次戦争による災害を蒙らなかつたため戦前からの建物があり、本件土地上の家屋もそうである。しかし、地下鉄中目黒駅に近く交通便で道路拡幅工事も行われ、附近の地価は上昇しているので、その更地価格は、昭和四三年九月二六日現在で一平方米当り金五一、七七三円と評価せられ、建付減額を一パーセントとし、これを昭和四二年九月一日に遡及修正すれば、本件土地の価格は合計金四三五〇万円と評定されるところ、その底地価格は三割が相当であるから、本件土地を被告が五〇年継続して使用しているという特殊性を考慮し右底地価格に対する期待利廻りを二パーセントとし、これに固定資産税年額金三五、三二〇円、都市計画税年額金八、九七〇円と管理費金九、四四〇円(上記税額の九七分の三)を合算して得られる金三一四、七三〇円をもつて年額賃料とするのが相当であるというのである。
しかしながら、借地法第一二条が賃貸借当事者に賃料の増減変更の請求を認めているのは、経済事情の変動等により契約成立当初の事情の変更を来すに至つたに拘らず、当初の合意内容を維持することが公平を欠くものとなることを考慮したものにほかならないところ、いわゆる底地価格に期待利廻りを乗じてこれに当該土地の負担する公租公課、土地管理費等を積算して賃料を決定する方法は、土地所有権の資本的機能を重視するものであつて、新規に賃貸借契約を締結する場合の賃料決定の方法としては合理性あることを否定できないにしても、賃料を増減して、もつて当事者の公平を図ろうとする増減額請求の場合には、契約当事者の具体的特殊性を無視する結果となり、殊に現今の如く土地の価格の変動が極めて投機性をもつている場合には寧ろ妥当性を欠くと考えられる。増減額請求の場合における賃料は、右の新規に賃貸借契約する場合に定められるであろう賃料額のほか、当該契約当事者の具体的事情および比隣の土地との権衡をも斟酌して定めるべきものと考える。右鑑定の結果を直ちにとつて本件土地の賃料とすることはできない。
よつて、以上の見地に基づいて検討するに、成立に争いのない甲第一号証と弁論の全趣旨によれば、被告は今次戦争前から継続して本件土地を賃借していたが、昭和三八年二月一日契約内容を原告ら主張のとおり改め、その後賃料の増額がなされて昭和四二年八月に至つたものであることが認められ、したがつて、その額を明らかにする証拠はないが、右契約内容を改めた当時相当額の書替料の授受がなされたものと推認せられること、また証人竹沢千穂子の証言によれば本件土地の近隣に借地している竹沢某の場合は、大正二年当時期間を定めず訴外正覚寺から賃借して今日に至つているのであるが、昭和四二年には3.3平方米金四五円であり、その以前は金三七円であつたところ、昭和四三年からは3.3平方米当り金四五円となつていること、そして右正覚寺のその他の賃貸地および近傍における賃借地はほぼ同様であることが認められる。以上の認定事実と前記鑑定の結果に徴すれば、本件土地の賃料月額金八、五七〇円の定めは著しく不相当であつて、賃料の増額請求を認むべきであるが、右増額せられるべき賃料は3.3平方米当り金五〇円を相当とする。本件土地の地積は943.92平方米(二八五坪五合四勺)であるから、月額金一四、二七七円である。(綿引末男)